季節と天気

学校の放課後

「夕焼けは、たぶん空の帰り道」

「悠。夕焼けってさ」 帰り道だった。 川沿いの道を二人で歩いている。 空はオレンジ色で、遠くの雲までゆっくり染まっていた。「うん」「空が家に帰ってる途中なんだと思う」「どういう状態だよ」 春は夕焼けを見上げたまま続ける。「だって朝は青いじゃ...
季節と天気

「浴衣って、歩く“夏”なんだと思う」

「悠。浴衣ってさ、“歩ける季節”だと思わない?」 商店街だった。 夏祭りの準備中らしく、頭の上には提灯が並んでいる。 まだ夕方なのに、空気だけ先に夜祭りの顔をしていた。「意味わからんこと言うな」「だって浴衣の人いると、“あ、夏来た”ってなる...
季節と天気

「日光浴は、太陽との雑談らしい」

「日光浴ってさ」春がベンチに寝転がったまま言った。「人間が“今日は光を浴びようかな〜”ってしてるの、ちょっと植物寄りだよね」「最初の一言から分類学がおかしい」放課後の公園だった。ブランコは風だけで揺れていて、遠くで小学生がドッジボールをして...
学校の放課後

「水たまりは、空の落とし物」

「ねえ悠。水たまりって、空のコピーじゃない?」 登校中だった。 昨夜の雨がまだ道路の端に残っていて、春はその前でしゃがみ込んでいる。「朝から詩人みたいなこと言うな」「だって見てよ。空が地面に落ちてる」「ただの雨水だろ」「でも、空って普通は触...
季節と天気

「梅雨って、空が考えごとしてる感じする」

「ねえ悠」 帰り道だった。 制服の袖が少し湿っていて、空はずっと灰色だった。「なんだよ」「梅雨ってさ、“空の低気圧期間”じゃなくて、“空の考えごと期間”な気がする」「急に詩人みたいになるな」 ぽつ、ぽつ、と雨が落ちる。 傘を叩く音が一定すぎ...
季節と天気

「ゴールデンウィークは、どこにも行かないのが一番遠い」

「悠、ゴールデンウィークってさ」 朝のホームルーム前、春は窓際で空を見ながら言った。「五回くらい“黄金”って言ってるのに、全然キラキラしてないよね」「名前の話?」「うん。もっと街とか金色にするべきだと思う」「景観条例で止められるだろ」 春は...
季節と天気

「森林浴って、森に褒められることらしいよ」

「ねえ悠。森林浴ってさ」 帰り道。 春は突然、道端の街路樹を見上げた。「なんだよ」「森に“よく来たね〜”って癒やされることらしいよ」「違うと思う」「えっ」「たぶんもっと科学的なやつだろ。木の香りとか、空気とか」「つまり森の接客?」「急に安っ...
季節と天気

「母の日の作戦会議」

「悠、母の日ってさ」 昼休み。 俺がパンを食べていると、春が突然そんなことを言った。「一年で一番、“ありがとう”が許される日だと思うんだよね」「普段から言えばいいだろ」「普段だと照れるじゃん」「それはまあ……少しは」「だからイベント化するの...
季節と天気

「アサガオは、昨日を覚えている」

「悠、起きて。アサガオが反省会してる」 夏休み初日の朝七時。 幼馴染に叩き起こされた理由としては、かなり意味がわからなかった。「……何それ」「昨日の夕方、しおれてたでしょ?」「植物だからな」「でも今めちゃくちゃ咲いてる。つまり、“昨日はすみ...