【女勇者フェルミノ 第11話】ブーメランは、当たると戻らない

女勇者フェルミノ第11話の表紙。【女勇者フェルミノ 第11話】ブーメランは、当たると戻らない 女勇者フェルミノ

港町の武器屋で、店主が新商品を掲げた。

「投げても手元へ戻る、魔法のブーメラン! 三百ゴールド!」

フェルミノは黒い弧を描く武器を見た。

「必ず戻りますか?」

「もちろん。風の魔法が込めてある」

「敵に当たった場合も?」

店主の笑顔が少し止まった。

「……当たれば、その場に落ちることもある」

「一番必要な時に戻らないのですね」

「当たったなら成功だろう」

「成功するたび、回収へ行く必要があります」

隣で試し投げをしていた冒険者が笑った。

「外しても戻るんだから便利だよ」

フェルミノは店の裏にある射撃場を借りた。的まで二十メートル。冒険者がブーメランを投げると、的を外れ、美しい円を描いて手元へ戻った。

「ほらな」

二投目は的の端に当たり、地面へ落ちた。

冒険者は二十メートル歩いて拾い、また戻ってきた。

「命中一回につき、往復四十メートルです」

「戦いなら敵のところまで行くから同じだ」

「遠距離武器を選んだ理由が消えています」

店主は別の商品を出した。

「こちらは回収の魔法付き。五百五十ゴールドだ」

「追加で二百五十ゴールド」

「安全に戻ってくるぞ」

「敵に持ち去られた場合は?」

「所有者が呪文を唱えれば戻る」

「呪文の時間は?」

「十秒ほど」

「その十秒、武器はありません」

店主は咳払いした。

フェルミノは普通の投げナイフを手に取った。一枚十五ゴールド。腰の鞘には六枚収まる。

「九十ゴールドです」

「でも戻ってこないぞ」

「最初から戻らないと分かっていれば、回収を前提にしません」

冒険者は首をかしげた。

ブーメランの使い方を考える女勇者フェルミノ

「戻る方が得じゃないのか?」

「戻る機能に二百十ゴールドを払い、命中するたび拾いに行くなら、便利さを買ったのか手間を買ったのか分かりません」

そのとき、港の倉庫から悲鳴が上がった。荷を荒らす大ネズミが三匹、木箱の間を走っている。

冒険者はブーメランを投げた。一匹に命中し、武器は箱の裏へ落ちた。

「効いた!」

残り二匹が冒険者へ向かう。

「ちょっと待て、今拾うから」

ネズミは待たなかった。

フェルミノは投げナイフを二枚抜き、続けて投げた。二匹の足元へ刺さり、進路を変えさせる。彼女は剣を抜き、短く踏み込んで追い払った。

戦いが終わると、冒険者は箱の裏からブーメランを見つけた。

「戻る武器なのに、俺が迎えに行った」

「命中した証拠です」

「慰めになってない」

フェルミノは投げナイフも拾った。刃こぼれはない。

店主が言う。

「結局、そっちも回収するんじゃないか」

「安全になった後なら拾います。戦闘中に戻ることを期待しません」

「違いはそこか?」

「機能ではなく、計画の違いです」

フェルミノは六枚の投げナイフを九十ゴールドで買った。

冒険者もブーメランを買った。ただし、背中へ予備の短剣を一本追加した。

「戻らなかった時用だ」

「良い判断です」

「でも名前は『戻る武器』なんだよな」

「名前は保証書ではありません」

店を出ると、海風が強く吹いた。冒険者は試しにブーメランを投げようとして、やめた。

「風が強い日は戻らないかもしれない」

「少しずつ理解していますね」

便利な道具とは、うまくいった時に派手なものではない。

うまくいかなかった時にも、次の手を残してくれるものだった。


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