町の冒険者ギルドで、若い冒険者が自分のステータスを開いていた。
「見ろ、あと経験値が十二でレベルが上がる!」
彼は窓口の横に貼られた魔物の討伐依頼を指した。
『街道の灰狼一頭。討伐証明を提出した者に報酬百二十ゴールド』
「灰狼の経験値は十二だ。ちょうどいい」
フェルミノは掲示板の隣にある、宿屋の料金表を見た。
「今日の宿代は、払えますか」
「レベルが上がれば、もっと強い依頼を受けられる」
「今日の宿屋は、明日の報酬を受け取りません」
若い冒険者は、財布から硬貨を出した。四十ゴールド。町の相部屋は一泊四十ゴールドだ。
「ほら、ぴったりある」
「夕食は」
「……レベルが上がれば腹も減らなくなるか?」
「なりません」
ギルドの受付係が、二人へ依頼票を差し出した。
「灰狼は昨日、街道の荷馬車を追いました。討伐だけでなく、通行の安全も確認してください」
フェルミノは道順と目撃地点を確かめ、依頼を引き受けた。人が通る前に片づけるべき仕事だった。
若い冒険者も立ち上がる。
「俺も行く。倒せばレベルが上がるし、報酬も出る」
「では、役割を決めましょう。あなたは荷馬車の誘導を。狼を追うのは私です」
「それじゃ経験値が入らない!」
「馬車の人に、経験値を渡してもらうわけにはいきません」
昼過ぎ、二人は街道の曲がり角に着いた。
灰狼は、荷台の影から現れた。若い冒険者が馬を道の外へ導く間に、フェルミノは狼の進路をふさぐ。
一度の踏み込みで間合いを詰め、剣で仕留めた。

若い冒険者は荷馬車を安全な場所へ移し、御者と一緒に周囲を確認した。
「これで通れるな」
「はい。報告できます」
フェルミノは灰狼の討伐証明を採った。ギルドへ戻ると、受付係は証明と御者の話を照らし合わせ、依頼の完了を記録した。
「報酬、百二十ゴールドです」
フェルミノは受け取った硬貨を財布に入れた。
若い冒険者は、自分のステータスを閉じている。
「俺の経験値は増えなかった。でも、荷馬車は通れた」
「あなたが道を空けたからです」
「それって、経験値にはならないんだな」
「仕事にはなりました。次は誘導も依頼に含めるよう、受付で伝えましょう」
若い冒険者は宿屋の料金表を見た。
「レベルが上がったら、宿代も安くなるといいのに」
「宿屋の方のレベルも上がっていたら?」
「……むしろ高くなるか」
フェルミノは、彼がまだ握っていた四十ゴールドを見た。
「まず、そのお金で今夜の寝床を確保してください」
「夕食は?」
「それは次の依頼を受ける前に、計算しましょう」

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