【女勇者フェルミノ 第24話】レベルアップしても、宿代は払えない

冒険者ギルドで依頼票を読む黒髪の女勇者フェルミノと、ステータス画面を見せる若い冒険者 女勇者フェルミノ

町の冒険者ギルドで、若い冒険者が自分のステータスを開いていた。

「見ろ、あと経験値が十二でレベルが上がる!」

彼は窓口の横に貼られた魔物の討伐依頼を指した。

『街道の灰狼一頭。討伐証明を提出した者に報酬百二十ゴールド』

「灰狼の経験値は十二だ。ちょうどいい」

フェルミノは掲示板の隣にある、宿屋の料金表を見た。

「今日の宿代は、払えますか」

「レベルが上がれば、もっと強い依頼を受けられる」

「今日の宿屋は、明日の報酬を受け取りません」

若い冒険者は、財布から硬貨を出した。四十ゴールド。町の相部屋は一泊四十ゴールドだ。

「ほら、ぴったりある」

「夕食は」

「……レベルが上がれば腹も減らなくなるか?」

「なりません」

ギルドの受付係が、二人へ依頼票を差し出した。

「灰狼は昨日、街道の荷馬車を追いました。討伐だけでなく、通行の安全も確認してください」

フェルミノは道順と目撃地点を確かめ、依頼を引き受けた。人が通る前に片づけるべき仕事だった。

若い冒険者も立ち上がる。

「俺も行く。倒せばレベルが上がるし、報酬も出る」

「では、役割を決めましょう。あなたは荷馬車の誘導を。狼を追うのは私です」

「それじゃ経験値が入らない!」

「馬車の人に、経験値を渡してもらうわけにはいきません」

昼過ぎ、二人は街道の曲がり角に着いた。

灰狼は、荷台の影から現れた。若い冒険者が馬を道の外へ導く間に、フェルミノは狼の進路をふさぐ。

一度の踏み込みで間合いを詰め、剣で仕留めた。

街道で荷馬車を安全な場所へ誘導する若い冒険者と、灰狼を討伐したフェルミノ

若い冒険者は荷馬車を安全な場所へ移し、御者と一緒に周囲を確認した。

「これで通れるな」

「はい。報告できます」

フェルミノは灰狼の討伐証明を採った。ギルドへ戻ると、受付係は証明と御者の話を照らし合わせ、依頼の完了を記録した。

「報酬、百二十ゴールドです」

フェルミノは受け取った硬貨を財布に入れた。

若い冒険者は、自分のステータスを閉じている。

「俺の経験値は増えなかった。でも、荷馬車は通れた」

「あなたが道を空けたからです」

「それって、経験値にはならないんだな」

「仕事にはなりました。次は誘導も依頼に含めるよう、受付で伝えましょう」

若い冒険者は宿屋の料金表を見た。

「レベルが上がったら、宿代も安くなるといいのに」

「宿屋の方のレベルも上がっていたら?」

「……むしろ高くなるか」

フェルミノは、彼がまだ握っていた四十ゴールドを見た。

「まず、そのお金で今夜の寝床を確保してください」

「夕食は?」

「それは次の依頼を受ける前に、計算しましょう」


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