春と悠シリーズ

春と悠シリーズ

「三時のおやつはだいたい世界を救う」

「悠。知ってる?」 放課後、春は購買のクリームパンを見つめながら言った。「人間の機嫌って、だいたい三時で決まるらしいよ」「初めて聞いたな、その学説」「だから三時のおやつって重要なんだよ。文明」「規模が急にでかい」 教室には夕方前の光が斜めに...
春と悠シリーズ

「エアコンの気持ち」

「悠。エアコンって、たまに人生に疲れてるよね」 教室に入ってきた瞬間、春が真顔で言った。「急にどうした」「だって見て。今日のエアコン、“二十四度設定なのに全然やる気ない風”してる」「風に感情を見出すな」 六月の午後だった。 梅雨前の湿気が教...
春と悠シリーズ

「歯磨きは、戦いだ」

「悠、知ってる?」 昼休み、春は突然真顔で言った。「歯磨きって、毎日やってるのに毎日負けるんだよ」「何に?」「食べカスに」「スケールが小さい戦争だな」 春はパンをもぐもぐしながら頷く。「しかも向こう、めちゃくちゃ隠れるの上手い」「まあ、奥歯...
春と悠シリーズ

「中間テストは、ちょっと未来の自分に会いに行くイベントらしい」

「悠、知ってる?」 朝一番、教室に入ってきた春が言った。「中間テストって、“今の自分の弱点発表会”じゃなくて、“未来の自分へのファンレター”なんだって」「誰が言ってたんだ、その怖い言葉」「今、私」 窓際の席にカバンを投げた春は、なぜかすごく...
春と悠シリーズ

「ゴールデンウィークは、どこにも行かないのが一番遠い」

「悠、ゴールデンウィークってさ」 朝のホームルーム前、春は窓際で空を見ながら言った。「五回くらい“黄金”って言ってるのに、全然キラキラしてないよね」「名前の話?」「うん。もっと街とか金色にするべきだと思う」「景観条例で止められるだろ」 春は...
春と悠シリーズ

「唐揚げ定食は、今日も世界を救えない」

「唐揚げ定食って、すごいよね」 昼休み。 購買へ向かう途中、春が急に立ち止まった。「また始まったな」「だって考えてみてよ。唐揚げって、“揚げられてる”のに人気者なんだよ?」「人気者の条件そこなの?」 春は本気の顔だった。 たぶん、本人の中で...
春と悠シリーズ

「B型って、自由ってこと?」

「悠って、絶対A型だよね」 昼休み、購買の焼きそばパンを半分に折った瞬間、春がそんなことを言った。「いや急だな」「え、違うの?」「違うけど」「えっ」 春は本当に驚いた顔をした。 たぶん、世界の重力が急に逆になったくらい驚いている。「じゃあ何...
春と悠シリーズ

「森林浴って、森に褒められることらしいよ」

「ねえ悠。森林浴ってさ」 帰り道。 春は突然、道端の街路樹を見上げた。「なんだよ」「森に“よく来たね〜”って癒やされることらしいよ」「違うと思う」「えっ」「たぶんもっと科学的なやつだろ。木の香りとか、空気とか」「つまり森の接客?」「急に安っ...
春と悠シリーズ

「母の日の作戦会議」

「悠、母の日ってさ」 昼休み。 俺がパンを食べていると、春が突然そんなことを言った。「一年で一番、“ありがとう”が許される日だと思うんだよね」「普段から言えばいいだろ」「普段だと照れるじゃん」「それはまあ……少しは」「だからイベント化するの...
春と悠シリーズ

「アサガオは、昨日を覚えている」

「悠、起きて。アサガオが反省会してる」 夏休み初日の朝七時。 幼馴染に叩き起こされた理由としては、かなり意味がわからなかった。「……何それ」「昨日の夕方、しおれてたでしょ?」「植物だからな」「でも今めちゃくちゃ咲いてる。つまり、“昨日はすみ...
遊ぶ