春と悠

春と悠シリーズ

「ダイヤモンドは落ちてない」

道端にダイヤモンドは落ちている? 小さな幸運を探す春と、冷静に返す悠。何気ない帰り道の見え方が少し変わる日常会話短編です。
春と悠シリーズ

「ファイナルアンサー」

「ねえ悠」 放課後のコンビニで、春はカップ焼きそばを見つめながら言った。「人生って、“ファイナルアンサー?”って聞かれる回数、多すぎない?」「急に『クイズミリオネア』みたいな話するな」「だってさ。進路希望もそうだし、提出物もそうだし、“本当...
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「眼鏡デビューは世界の再放送」

「ねえ悠。眼鏡って、世界の“高画質版”だと思わない?」 朝一番、教室に入ってきた春は、開口一番そんなことを言った。 しかも伊達眼鏡だった。「いや、お前目いいだろ」「うん。でも“見える”と“見ようとする”って違うじゃん?」「朝から哲学っぽいこ...
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「コロッケはたぶん丸い気持ち」

「ねえ悠」 帰り道だった。「コロッケって、“許してくる感じ”あるよね」「何その圧のない宗教みたいな言い方」 商店街の夕方は、油の匂いがする。 肉屋の前を通るたびに、春は吸い寄せられるみたいに立ち止まる。今日もショーケースの前で、完全に猫だっ...
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「いないいないの才能」

「ねえ悠。赤ちゃんって、なんで“いないいないばあ”で笑うんだろ」 帰り道だった。 夕焼けが住宅街をオレンジ色に染めていて、自転車を押す春の影が妙に長い。「知らないけど。急に育児の話?」「いや、さっき公園で見たの。お母さんが“いないいないばあ...
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「色鉛筆は、たぶん性格が出る」

「ねえ悠。白の色鉛筆って、なんのためにあるんだろうね」 放課後だった。 美術室の窓から、夕方の光が斜めに差している。 机の上には、使いかけの色鉛筆が散らばっていた。「紙が白なんだから、描いても見えないじゃん」 春は真剣な顔で白色鉛筆を掲げて...
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「カレンダーには敗北が書いてある」

「ねえ悠。カレンダーって、ちょっと失礼じゃない?」 放課後、春は教室の壁を見ながら言った。「急にどうした」「だって、“明日が来ますよ”って顔してる」「来るだろ」「でも、こっちはまだ今日をやってる途中なのに」 意味が分からない。 窓の外では運...
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「三時のおやつはだいたい世界を救う」

「悠。知ってる?」 放課後、春は購買のクリームパンを見つめながら言った。「人間の機嫌って、だいたい三時で決まるらしいよ」「初めて聞いたな、その学説」「だから三時のおやつって重要なんだよ。文明」「規模が急にでかい」 教室には夕方前の光が斜めに...
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「エアコンの気持ち」

「悠。エアコンって、たまに人生に疲れてるよね」 教室に入ってきた瞬間、春が真顔で言った。「急にどうした」「だって見て。今日のエアコン、“二十四度設定なのに全然やる気ない風”してる」「風に感情を見出すな」 六月の午後だった。 梅雨前の湿気が教...
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「歯磨きは、戦いだ」

「悠、知ってる?」 昼休み、春は突然真顔で言った。「歯磨きって、毎日やってるのに毎日負けるんだよ」「何に?」「食べカスに」「スケールが小さい戦争だな」 春はパンをもぐもぐしながら頷く。「しかも向こう、めちゃくちゃ隠れるの上手い」「まあ、奥歯...
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