日常の不思議

学校の放課後

「忘れ物は、たぶん未来からの手紙」

「悠。忘れ物ってさ」 朝だった。 教室にはまだ人が少なく、窓から入る風がカーテンをゆらしている。 春は自分の机を見つめながら、腕を組んでいた。「なんだ」「未来の自分からのメッセージだと思う」「一時間目から何言ってるんだ」 春の机の上には何も...
学校の放課後

「虫眼鏡って、世界の“やる気スイッチ”だと思う」

「悠。虫眼鏡って、世界を本気にさせる道具だよね」 昼休みだった。 理科準備室の前の廊下で、春がしゃがみ込んでいた。 その手には、なぜか虫眼鏡。「急に危なそうなこと言うな」「見てこれ」 春は床に落ちていたプリントの切れ端を虫眼鏡で見つめている...
学校の放課後

「寝返りって、裏切りっぽい名前してるよね」

「悠。寝返りって、名前がよくないと思う」 昼休みだった。 窓の外では野球部が叫んでいて、教室の後ろでは誰かがプリンを落としていた。 そんな平和な空間で、春は机に突っ伏したまま真顔で言った。「急にどうした」「だって“寝返り”だよ? 寝ながら裏...
日常の不思議

「いらっしゃいませの圧」

「悠。コンビニの“いらっしゃいませ”って、たまに人生より元気だよね」 放課後、商店街のコンビニに入った瞬間、春が言った。「比較対象がでかいな」「だって聞いて。今の店員さん、“いらっしゃいませぇぇぇ!!!”って、ほぼフェスだったよ?」「コンビ...
学校の放課後

「風邪薬って、未来を前借りしてる感じしない?」

「悠。風邪薬って、未来を前借りしてる感じしない?」 放課後の教室で、春が唐突に言った。 窓の外では、運動部の掛け声が遠くで跳ねている。 六月前のぬるい風がカーテンを揺らしていて、教室には“帰るにはまだ少し早い空気”が残っていた。「急に怖いこ...
学校の放課後

「プライドって、どこに置くの?」

「悠。プライドってさ、たぶん“床に置いたら終わりなもの”なんだよ」 放課後の廊下で、春が急にそんなことを言った。「なんで急に雑な格言みたいなの始まった」「今、男子バスケ部の人が“俺にもプライドがある!”って言ってたから」「まあ、言う時あるだ...
学校の放課後

「募金箱って、たまに試されてる気がする」

「悠。募金箱って、たまに人間性テストしてない?」 コンビニを出た瞬間、春が真顔で言った。「してない。あれは募金を集める箱だ」「でも絶妙な位置にあるじゃん。レジ終わった直後の、“いい人になれるラストチャンス”みたいな場所に」「言い方が通販サイ...
日常の不思議

「図鑑って、“世界のネタバレ本”じゃない?」

「図鑑ってさ」 帰り道、春が急に立ち止まった。「“世界のネタバレ本”だよね」「急にスケールがでかいな」 悠は自転車を押しながらため息をつく。「だって見てよ。“カブトムシは夜行性です”とか、“ペンギンは飛べません”とか書いてるんだよ?」「うん...
学校の放課後

「水たまりは、空の落とし物」

「ねえ悠。水たまりって、空のコピーじゃない?」 登校中だった。 昨夜の雨がまだ道路の端に残っていて、春はその前でしゃがみ込んでいる。「朝から詩人みたいなこと言うな」「だって見てよ。空が地面に落ちてる」「ただの雨水だろ」「でも、空って普通は触...
季節と天気

「梅雨って、空が考えごとしてる感じする」

「ねえ悠」 帰り道だった。 制服の袖が少し湿っていて、空はずっと灰色だった。「なんだよ」「梅雨ってさ、“空の低気圧期間”じゃなくて、“空の考えごと期間”な気がする」「急に詩人みたいになるな」 ぽつ、ぽつ、と雨が落ちる。 傘を叩く音が一定すぎ...