春と悠

学校の放課後

「読み聞かせは、たぶん戦い」

「悠。読み聞かせってさ」 放課後の図書室で、春が急に言った。「人類が“声”に課金した最初の文化だよね」「急に文明史みたいに言うな」 六月の図書室は静かだった。 窓の外では運動部の声が遠くに聞こえていて、カーテンが少しだけ揺れている。 春は絵...
学校の放課後

「風邪薬って、未来を前借りしてる感じしない?」

「悠。風邪薬って、未来を前借りしてる感じしない?」 放課後の教室で、春が唐突に言った。 窓の外では、運動部の掛け声が遠くで跳ねている。 六月前のぬるい風がカーテンを揺らしていて、教室には“帰るにはまだ少し早い空気”が残っていた。「急に怖いこ...
学校の放課後

「二人三脚って、だいたい片方が転ぶ競技だよね」

「悠。二人三脚って、すごい青春っぽい名前してるけど、冷静に考えたら“合法的にもつれる大会”だよね」 朝のホームルーム前。 春は椅子に座ったまま、真顔で言った。「体育祭の種目に対する解像度がおかしい」「だって脚くっつけるんだよ? 普通に歩くの...
学校の放課後

「プライドって、どこに置くの?」

「悠。プライドってさ、たぶん“床に置いたら終わりなもの”なんだよ」 放課後の廊下で、春が急にそんなことを言った。「なんで急に雑な格言みたいなの始まった」「今、男子バスケ部の人が“俺にもプライドがある!”って言ってたから」「まあ、言う時あるだ...
学校の放課後

「ラッキーナンバー」

「悠。人には“ラッキーナンバー”があるじゃん?」 放課後、春は急にそんなことを言った。 しかも、自販機の前で。「急に占い師みたいな話始めたな」「違う違う。もっと現実的なやつ」「現実的なラッキーナンバーって何だよ」 春は真顔で缶ココアを押した...
学校の放課後

「オノマトペの渋滞」

「悠。たぶん今日、日本で一番“ふわふわ”してるの、あのパンだよ」 登校中、春が唐突に言った。 朝の商店街だった。 パン屋の前を通るたびに、焼きたての匂いがふわっと流れてくる。 春はその匂いを吸い込みながら、真顔でうなずいた。「“ふわふわ”っ...
学校の放課後

「絶対音感の使い道」

「悠」「なんだ」「たぶん今、世界のどこかでプリンが落ちた」「どういう感知能力だよ」 放課後だった。 窓の外では運動部の掛け声が聞こえていて、教室には夕方特有のオレンジ色が広がっている。 春は机に突っ伏しながら、なぜか天井を見ていた。「今、“...
学校の放課後

「募金箱って、たまに試されてる気がする」

「悠。募金箱って、たまに人間性テストしてない?」 コンビニを出た瞬間、春が真顔で言った。「してない。あれは募金を集める箱だ」「でも絶妙な位置にあるじゃん。レジ終わった直後の、“いい人になれるラストチャンス”みたいな場所に」「言い方が通販サイ...
遊びと趣味

「ルーレットって、人生の言い訳に似てる」

「悠。ルーレットって、めちゃくちゃ優しい機械だと思わない?」 帰り道だった。 商店街のゲームセンターの前で、春が立ち止まる。 ガラス越しに見えるルーレット台では、赤と黒のランプがぐるぐる回っていた。「急にどうした」「だってさ。自分で決めなく...
日常の不思議

「図鑑って、“世界のネタバレ本”じゃない?」

「図鑑ってさ」 帰り道、春が急に立ち止まった。「“世界のネタバレ本”だよね」「急にスケールがでかいな」 悠は自転車を押しながらため息をつく。「だって見てよ。“カブトムシは夜行性です”とか、“ペンギンは飛べません”とか書いてるんだよ?」「うん...