春と悠

春と悠シリーズ

「参考書は、たぶん未来の自分からの手紙」

「悠。参考書って、“未来の自分の攻略本”なんだよ」 放課後だった。 教室にはまだ夕方の光が残っていて、窓の外では野球部の声が遠くに響いている。 春は机に突っ伏したまま、開きっぱなしの参考書を見ていた。 まったく勉強している姿勢ではない。「そ...
春と悠シリーズ

「ペン回しは、たぶん小さな冒険」

「悠。ペン回しって、“指のサーカス”だと思わない?」 昼休みだった。 窓際の席で、春はシャーペンをくるくる回している。 もちろん、成功してはいない。 五秒に一回くらい床に落ちていた。「サーカスに失礼だろ」「でも見て。今の、“ライオンが火の輪...
春と悠シリーズ

「虫眼鏡って、世界の“やる気スイッチ”だと思う」

「悠。虫眼鏡って、世界を本気にさせる道具だよね」 昼休みだった。 理科準備室の前の廊下で、春がしゃがみ込んでいた。 その手には、なぜか虫眼鏡。「急に危なそうなこと言うな」「見てこれ」 春は床に落ちていたプリントの切れ端を虫眼鏡で見つめている...
春と悠シリーズ

「美術館って、たぶん“静かに騒ぐ場所”なんだと思う」

「悠。美術館って、絵が飾ってある“動かない遊園地”だよね」 美術館に入って三秒で、春がそんなことを言った。「遊園地に謝れ」「でもみんな、すごい顔して歩いてるじゃん」「“鑑賞”って言うんだよ」 休日だった。 駅前の新しい美術館は、白くて広くて...
春と悠シリーズ

「しりとりって、終わらせたら負けな気がする」

「悠。しりとりってさ、“会話を永久機関にしたい人類の夢”だよね」 放課後だった。 教室には、西日のオレンジ色がゆっくり広がっている。 誰もいなくなった教室で、春は机に突っ伏しながら、窓の外を見ていた。「急に壮大だな」「だって、“りんご”って...
春と悠シリーズ

「寝返りって、裏切りっぽい名前してるよね」

「悠。寝返りって、名前がよくないと思う」 昼休みだった。 窓の外では野球部が叫んでいて、教室の後ろでは誰かがプリンを落としていた。 そんな平和な空間で、春は机に突っ伏したまま真顔で言った。「急にどうした」「だって“寝返り”だよ? 寝ながら裏...
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「イヤホンは、世界を半分だけ消す装置」

「悠。イヤホンって、ちょっと失礼だよね」 登校中、春が急に言った。「朝からどういう話題だ」「だってさ、人類って“話しかけないでください”を耳に刺して歩いてるんだよ?」「言い方が物騒なんだよ」 春は片耳だけイヤホンをつけた高校生を見ながら、ふ...
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「クッキーの気持ち」

「悠。お菓子作りって、めちゃくちゃ性格出るよね」 放課後の家庭科室で、春が真顔で言った。「急に心理学みたいな入り方するな」「だってクッキーって、“焼かれる前はみんな平等”なのに、焼かれた瞬間に人生分かれるんだよ?」「クッキーに人生背負わせる...
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「街路樹は、たぶん街の観葉植物」

「悠。街路樹って、街が寂しがり屋だから植えてるんだと思う」 下校中だった。 夕方の風がぬるくて、信号待ちの車がぼんやり光っている。 歩道の横には、等間隔に並んだ街路樹。 春はその一本を見上げながら、なぜかちょっと感心した顔をしていた。「行政...
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「これはペンです」

「悠。『これはペンです』って、ちょっと強すぎない?」 放課後の教室で、春が突然そう言った。 窓の外では運動部の掛け声が聞こえていて、夕日が黒板をオレンジ色にしている。 俺は英語のワークを閉じた。「何が強いんだよ」「だって、“これはペンです”...
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