春と悠シリーズ

春と悠シリーズ

「タイムマシンは、たぶん遅刻するためにある」

「悠。タイムマシンって、絶対ちょっと遅れるよね」 朝だった。 登校中の坂道で、春はいつものようにパンをくわえていた。 今どき漫画でも見ないスタイルだった。「なんでだよ」「だって未来の技術だよ? “すごいです!”って顔してる機械ほど、アップデ...
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「浴衣って、歩く“夏”なんだと思う」

「悠。浴衣ってさ、“歩ける季節”だと思わない?」 商店街だった。 夏祭りの準備中らしく、頭の上には提灯が並んでいる。 まだ夕方なのに、空気だけ先に夜祭りの顔をしていた。「意味わからんこと言うな」「だって浴衣の人いると、“あ、夏来た”ってなる...
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「ピアノは、たぶん記憶を踏んでいる」

「悠。ピアノって、“音の階段”だと思わない?」 放課後だった。 音楽室の窓から、夕方の光が床に長く伸びている。 誰もいない教室の真ん中で、春はグランドピアノを見つめていた。「急に詩人みたいなこと言うな」「だって見て。鍵盤、白と黒で交互になっ...
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「参考書は、たぶん未来の自分からの手紙」

「悠。参考書って、“未来の自分の攻略本”なんだよ」 放課後だった。 教室にはまだ夕方の光が残っていて、窓の外では野球部の声が遠くに響いている。 春は机に突っ伏したまま、開きっぱなしの参考書を見ていた。 まったく勉強している姿勢ではない。「そ...
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「ペン回しは、たぶん小さな冒険」

「悠。ペン回しって、“指のサーカス”だと思わない?」 昼休みだった。 窓際の席で、春はシャーペンをくるくる回している。 もちろん、成功してはいない。 五秒に一回くらい床に落ちていた。「サーカスに失礼だろ」「でも見て。今の、“ライオンが火の輪...
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「虫眼鏡って、世界の“やる気スイッチ”だと思う」

「悠。虫眼鏡って、世界を本気にさせる道具だよね」 昼休みだった。 理科準備室の前の廊下で、春がしゃがみ込んでいた。 その手には、なぜか虫眼鏡。「急に危なそうなこと言うな」「見てこれ」 春は床に落ちていたプリントの切れ端を虫眼鏡で見つめている...
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「美術館って、たぶん“静かに騒ぐ場所”なんだと思う」

「悠。美術館って、絵が飾ってある“動かない遊園地”だよね」 美術館に入って三秒で、春がそんなことを言った。「遊園地に謝れ」「でもみんな、すごい顔して歩いてるじゃん」「“鑑賞”って言うんだよ」 休日だった。 駅前の新しい美術館は、白くて広くて...
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「しりとりって、終わらせたら負けな気がする」

「悠。しりとりってさ、“会話を永久機関にしたい人類の夢”だよね」 放課後だった。 教室には、西日のオレンジ色がゆっくり広がっている。 誰もいなくなった教室で、春は机に突っ伏しながら、窓の外を見ていた。「急に壮大だな」「だって、“りんご”って...
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「寝返りって、裏切りっぽい名前してるよね」

「悠。寝返りって、名前がよくないと思う」 昼休みだった。 窓の外では野球部が叫んでいて、教室の後ろでは誰かがプリンを落としていた。 そんな平和な空間で、春は机に突っ伏したまま真顔で言った。「急にどうした」「だって“寝返り”だよ? 寝ながら裏...
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「イヤホンは、世界を半分だけ消す装置」

「悠。イヤホンって、ちょっと失礼だよね」 登校中、春が急に言った。「朝からどういう話題だ」「だってさ、人類って“話しかけないでください”を耳に刺して歩いてるんだよ?」「言い方が物騒なんだよ」 春は片耳だけイヤホンをつけた高校生を見ながら、ふ...
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